この記事の要点
- 夜空にまっすぐ伸びる緑色のビームの多くは、大気を計測するライダー(レーザーレーダー)によるものとされます。
- 国立環境研究所・気象研究所・京都大学生存圏研究所などが、波長532nmの緑色レーザーを上空へ照射して大気を計測しています。
- 2023年にはすばる望遠鏡の全天カメラが脈動する微弱な緑色レーザーを捉え、中国の地球観測衛星「Daqi-1(大気一号)」由来の可能性が高いとされました。
- 地球観測衛星に搭載されたレーザー高度計やライダーは実在の技術で、地表に届くころの光は微弱とされます。
- 「未確認」は正体が特定できていない状態を指す言葉で、地球外を意味するものではありません。
「夜空にまっすぐ伸びる緑色のレーザーを見た」「空から緑の点が列をなして降りてきた」という報告があります。その多くは、大気を計測するライダー(レーザーレーダー)や、地球観測衛星から照射されるレーザーによるものとされます。ここでいう「未確認」は正体が特定できていない状態を指す言葉で、地球外を意味しません。本記事では、検証済みの観測事例をもとに、緑色レーザーの正体と見分けの手がかりを整理します。
夜空に伸びる緑色のビームを見たら
夜空に、まっすぐ天頂へ向かって伸びる細い緑色の光の柱を見ることがあります。まず候補に入れたいのは、地上の装置や上空の衛星から照射されたレーザー光です。レーザーは指向性が強く、空気中のちりや雲の粒に当たって散乱することで、光の筋として見えることがあります。
緑色に見えるのには理由があります。大気を計測するライダーには波長532nmの緑色レーザーがよく用いられ、緑色は人の目に明るく感じられ、大気中での散乱も観測しやすいためとされます。色が緑であること自体は、未知の物体ではなく観測用レーザーである可能性をむしろ示す手がかりになります。
正体の多くは大気観測ライダー(レーザーレーダー)
ライダー(レーザーレーダー)は、上空へレーザーを照射し、大気中のちりやエアロゾル、雲などに当たって戻ってくる光を捉えることで、大気の状態を計測する装置です。国立環境研究所や気象研究所、京都大学生存圏研究所などが運用しており、532nmの緑色レーザーを使う地上設置型の装置では、夜間に緑のビームが見える事例が報告されています。
設置場所はさまざまで、つくばや信楽のような観測拠点のほか、桜島では火口の監視にライダーが用いられた例も知られています。観測拠点の近くで、ほぼ決まった方向へ伸び続ける緑のビームを見た場合は、まずこうした地上の大気観測ライダーを候補にするのが基本です。
人工衛星から照射されるレーザーの例
レーザーは地上の装置だけでなく、地球観測衛星からも照射されています。衛星に搭載されたレーザー高度計やライダーは、地表や大気へレーザーを向け、戻ってくる光から地形・氷床の高さや、大気中のエアロゾル・二酸化炭素などを計測する実在の技術です。
2023年1月28日深夜(ハワイ時)、すばる望遠鏡の星空ライブカメラ(全天カメラ)が、脈動する微弱な緑色のレーザー光を捉えました。当初はNASAの地球観測衛星ICESat-2に搭載されたレーザー高度計ATLAS由来と推定されましたが、ICESat-2チームやハワイ観測所、報道関係者の議論を経て、中国・上海航天技術研究院が2022年に打ち上げた地球環境観測衛星「Daqi-1(大気一号、DQ-1)」由来の可能性が高いと結論づけられました。同衛星に搭載されたACDLは、緑色レーザーで大気や二酸化炭素、エアロゾルを観測する装置です。
衛星のレーザーは「実在の技術」
点列・スキャンするように動く光の見分け
緑のレーザーが点線状に区切られて見えたり、空から点が列をなして降りてくるように見えたりすることがあります。すばる望遠鏡が捉えた緑色レーザーも脈動していたと報告されており、これは衛星のレーザーがパルス(断続的な発光)で照射されることや、移動するカメラ・衛星との位置関係によって、連続した光が点の列として記録されるためと考えられます。
- 光が点線状・点列に見える場合は、連続した光ではなくパルス状のレーザーや、撮影中の動きによる写り方を疑います。
- ビームが空をなめるようにスキャンして動く場合は、ライダーが観測方向を変えている可能性を考えます。
- 同じ方向へ伸び続ける固定的なビームは、地上設置型のライダーである可能性が高まります。
- 肉眼ではほとんど見えないのに写真や動画にだけ緑の筋が写る場合は、微弱なレーザーや光学的な写り込みを疑います。
なお、地上から人や航空機に向けられる緑色のレーザーポインタの光も、夜空では筋として見えることがあります。これは観測用レーザーとは別の人為的な光であり、危険で違法な行為です。
観察したら記録しておきたいこと
正体を後から照合するには、観察時の記録が役立ちます。とくにレーザー光は、近くに観測施設があるか、衛星の通過時刻と合うかが手がかりになります。
- 1観察した日時(できれば分単位)と場所、ビームの方角と高度を記録します。
- 2光が連続していたか、点列・パルス状だったか、スキャンするように動いたかを書き留めます。
- 3色が緑かどうか、肉眼で見えたか写真にだけ写ったかを区別し、近くに大気観測の施設がないかを確認します。
まず確認したいこと
誤認されやすい既知現象の一覧はUFOの見分け方の早見表に、空の光を順に確かめる手順はチェックリストにまとめています。列をなして動く光については、人工衛星に由来する事例もあわせて確認できます。
よくある質問
夜空にまっすぐ伸びる緑のレーザーは何ですか?+
多くは、大気を計測するためのライダー(レーザーレーダー)によるものとされます。国立環境研究所や気象研究所、京都大学生存圏研究所などが、波長532nmの緑色レーザーを上空へ照射して大気の状態を観測しています。地上設置型の装置では、夜間に緑のビームが見える事例が報告されています。
衛星からレーザーが出ているというのは本当ですか?+
本当です。地球観測衛星に搭載されたレーザー高度計やライダーは、地形や大気を計測するために実際に使われています。2023年にはすばる望遠鏡の全天カメラが緑色レーザーを捉え、中国の地球観測衛星「Daqi-1(大気一号)」由来の可能性が高いとされました。
緑のレーザーは目に危険ですか?+
大気観測ライダーや衛星由来の光は、地表に届くころには微弱とされ、すばる望遠鏡が捉えた事例も肉眼ではほぼ知覚できないほどだったと報告されています。一方で、地上の出力の高いレーザーポインタを人や航空機に向ける行為は危険であり、違法でもあります。光源の種類によって扱いが異なる点に注意が必要です。
光が点列やスキャン状に見えるのはなぜですか?+
レーザーがパルス(断続的な発光)で照射されることや、移動する衛星・カメラとの位置関係によって、連続した光が点の列として記録されるためと考えられます。ライダーが観測方向を変えると、ビームが空をなめるようにスキャンして見えることもあります。
