この記事の要点
- 夜光雲は高度約80〜90kmの中間圏界面付近にできる氷の雲で、正式には極中間圏雲(PMC/NLC)と呼ばれます。
- 地平線下に沈んだ太陽の光が高空の雲に当たり、暗い地上から見ると青白く輝いて見えるとされます。
- 主に夏半球の緯度約50〜70度で、夏季の薄明(日の出前や日没後)の薄暗い空に現れます。
- 日本では2015年6月21日早朝、北海道内の複数地点で撮影画像を用いた国内初の同定例が報告されています。
- ロケットの排気に由来する人工的な発光雲もあり、自然発生の極中間圏雲とは成因が異なります。
夏の明け方や日没後の薄明の空に、青白く筋状に光る雲が見えることがあります。これは夜光雲と呼ばれ、高度約80〜90kmの非常に高い空にできる氷の雲が、地平線下に沈んだ太陽の光を受けて輝く現象とされます。日本でも北海道で観測例が報告されています。ここでは夜光雲の仕組みと見える条件、国内での観測例、そして近年注目される背景を事実ベースで整理します。
夜光雲とは何か(高度と仕組み)
夜光雲は、地球大気の中間圏界面付近、高度およそ80〜90kmにできる氷の結晶でできた雲とされます。これは通常の雲(対流圏の雲、高度およそ10km以下)よりはるかに高い場所にあり、地球大気でもっとも高い高度に現れる雲のひとつです。正式には極中間圏雲(PMC/NLC)と呼ばれます。
見える仕組みは、太陽の位置と高度の関係にあります。日没後や日の出前、地上はすでに暗くなっていても、高度80km前後の高空にはまだ地平線下の太陽の光が届きます。その光を雲の氷の粒が散乱し、暗い地上から見上げると、雲だけが青白く浮かび上がって見えるとされます。青みがかって見えるのは、ごく小さな氷の微粒子による光の散乱(短い波長の青い光が散乱されやすいレイリー散乱)が関係すると考えられています。
極中間圏雲(PMC/NLC)
いつ・どの空に見えるか
夜光雲が観測されやすいのは、主に夏半球の緯度約50〜70度の地域とされ、夏季に多く現れます。時間帯は、空が完全に暗くなる前後の薄明、つまり日没後しばらくの間や日の出前の薄暗い時間です。地上が暗く、なおかつ高空には太陽光が当たっているという条件が重なるためです。
- 季節は夏季が中心とされます。
- 時間帯は日没後や日の出前の薄明の時間です。
- 方角は、太陽が沈んだ/昇る側、すなわち地平線近くの低い空に見えることが多いとされます。
- 空が完全に暗くなると見えなくなります。地上が暗く高空に光が届く薄明の条件が必要なためです。
日本での観測例(北海道での検出)
夜光雲が多く見られるのは高緯度地域で、日本の本州あたりの緯度では自然発生のものは見えにくいとされてきました。そうしたなか、2015年6月21日の早朝、北海道内の複数地点(陸別・紋別・名寄市天文台・オホーツクスカイタワーなど)で夜光雲が撮影され、同定されたことが報告されています。
この観測は、北海道大学・名古屋大学・駒澤大学・明治大学・国立極地研究所・情報通信研究機構(NICT)などの研究グループによるもので、複数のカメラがとらえた画像を照合して位置と高度を求め、夜光雲であると同定したとされます。北海道(おおむね北緯43〜44度付近)からの最初の撮像・同定例として位置づけられています。
国内での同定例
近年注目される理由(出現頻度の変化)
夜光雲は近年、出現する緯度が下がったり頻度が増えたりしている可能性が指摘されており、その背景として大気の変化が議論されています。二酸化炭素やメタンの増加が、地表付近を温める一方で高層の中間圏を冷やす方向に働き、氷の雲ができやすくなっているとする見方があります。
こうしたことから、夜光雲は高層大気の変化を映す指標のひとつとして注目されることがあります。ただし、これは観測と仮説に基づく議論の段階であり、変化の原因や規模については研究が続けられているとされます。断定的に語れる段階ではない点に注意が必要です。
発光する雲をUFOと混同しないために
薄明の空に青白く光る雲は見慣れないため、正体不明の光として受け取られることがあります。しかし夜光雲は、ここまで述べたように高度や仕組みが分かっている既知の自然現象とされます。観察した日時・方角・高度を記録し、夏季・薄明・低空という条件に当てはまるかを確かめると、夜光雲かどうかを判断する手がかりになります。
一方で、発光する雲のすべてが夜光雲とは限りません。たとえば2017年1月や2020年などに関東以西で見られた青白い発光雲は、H2Aロケットの排気(おもに水蒸気)に由来する人工的なもので、自然発生の極中間圏雲とは成因が異なるとされます。打ち上げ直後に出現する場合は、こうした人工的な発光雲の可能性も検討する必要があります。
まず確認したいこと
その場で正体が特定できなくても、それは直ちに未確認の物体や地球外由来を意味しません。観察したものを既知の現象と一つずつ照合し、最後まで説明がつかなかったものだけを慎重に扱う姿勢が基本です。誤認されやすい既知現象の一覧や、UFOの見分け方もあわせて確認できます。
よくある質問
夜光雲とはどんな雲ですか?+
高度約80〜90kmの中間圏界面付近にできる、氷の結晶でできた雲とされます。正式には極中間圏雲(PMC/NLC)と呼ばれます。地平線下に沈んだ太陽の光が高空の雲に当たり、暗い地上から見上げると青白く輝いて見えるのが特徴です。
日本でも夜光雲は見られますか?+
夜光雲は主に高緯度地域で観測されますが、日本でも報告例があります。2015年6月21日早朝には、北海道内の複数地点で撮影された画像をもとに研究グループが夜光雲を同定したと報告されています。緯度の低い地域では見えにくいとされ、観測は限られます。
いつ頃・どの方角に見えますか?+
主に夏季の薄明、すなわち日没後や日の出前の薄暗い時間に見られます。方角は太陽が沈んだ側や昇る側、つまり地平線近くの低い空に現れることが多いとされます。空が完全に暗くなると見えなくなります。
夜光雲とオーロラは違いますか?+
別の現象です。オーロラは高度約100km以上で大気の分子が発光する電磁的な現象です。一方、夜光雲は高度80km前後にできる氷の雲が太陽光を散乱して輝く現象で、発光の仕組みも高度も異なります。
