この記事の要点
- FAAは管制官向け規程で呼称を「UFO」から「UAP(未確認異常現象)」へ変更しました(通達N 7110.800、発効2025年10月26日)。
- 2026年1月22日付の航空情報マニュアル(AIM)改訂でも該当節が「UAP報告」に改題され、民間のUFO情報収集団体への案内が削除されました。
- 管制官はUAPの報告・観察を運用責任者へ伝え、所定のネットワーク経由で保安担当チームへ通報する手順が示されています。
- 用語変更の背景には、UAPを定義した米国法(50 U.S.C. 3373、2022年成立)があります。
- 報告では位置・高度・進路・速度・形状・数などの観測項目が手がかりになり、一般の見分けにも応用できます。
アメリカの航空当局である連邦航空局(FAA)は、空で確認できない物体や現象を指す呼称を、長年使われてきた「UFO(未確認飛行物体)」から「UAP(未確認異常現象)」へ改めました。あわせて、パイロットや航空管制官が観察した場合の報告経路と取り扱いも、管制官向けの規程の中で整理し直しています。
このページでは、FAAが2025年から2026年にかけて公表した通達(Notice)と各規程の改訂をもとに、何がどう変わったのか、報告にはどんな観測項目が求められるのかを、一次資料で確認できた範囲で淡白にまとめます。「未確認」は正体が確認できていない状態を意味する言葉であり、地球外の存在を裏づけるものではない、という点は前提として押さえておきます。
何が変わったのか:UFOからUAPへ
FAAは2025年9月12日付の通達「N 7110.800」を出し、航空管制官の手順を定める規程(Order JO 7110.65)の中で、従来の「UFO(Unidentified Flying Object/未確認飛行物体)」という語を「UAP(Unidentified Anomalous Phenomena/未確認異常現象)」へ置き換えました。この通達は2025年10月26日に発効したとされています。具体的には、規程の「略語」や「一般」にあたる節で語が差し替えられました。
用語変更の背景には、米国の法律があります。2022年に成立した米国法典50編3373条(50 U.S.C. 3373)がUAPという用語を定め、関係機関に報告を集約する仕組みを整えました。FAAの改訂も、この法律で使われる呼称に合わせたものとされています。呼び名が変わっただけで、観察された現象の正体が判明したわけではありません。
UAPという言葉の意味
報告の経路:誰が、どこへ通報するのか
改訂後の管制官向け規程では、パイロットの報告や航空管制官自身の観察でUAP活動が把握された場合、まず運用責任者(オペレーションズ・スーパーバイザー/CIC)に知らせることが求められます。さらに、ドメスティック・イベント・ネットワーク(DEN)を通じて、保安を担う担当チーム(NTSOのATSC)へ通報する手順が示されています。
また、2026年1月22日付で改訂された航空情報マニュアル(AIM)では、該当する節の見出しが「未確認飛行物体(UFO)報告」から「未確認異常現象(UAP)報告」へ改題されました。従来この節にあった民間のUFO情報収集団体への案内は削除され、代わりに政府の専門組織であるAARO(全領域異常解決局/All-domain Anomaly Resolution Office)のウェブサイトへの案内が加えられたとされています。
- 1パイロットがUAPと思われる現象を観察したら、通信中の管制機関に伝えます。
- 2管制官はその内容を運用責任者に報告します。
- 3所定のネットワーク(DEN)経由で保安担当チームへ通報されます。
- 4一般の人を含め、政府への報告を希望する場合はAAROのウェブサイトが案内されます。
民間団体から政府窓口へ
報告に必要な観測項目
FAAの航空情報マニュアルは以前から、未確認の現象を報告する際に記録しておくとよい観測項目を示してきました。報告内容を整える際の手がかりとして、物体や光の大きさ・形・数・編隊の有無・進む方向(進路)・高度・速度・色・継続時間などが挙げられます。レーダーに映ったかどうかや、その時の天候といった補足情報も、可能であれば添えると記録の精度が上がります。
これらはプロが現象を整理するための項目ですが、考え方は一般の人が「空で見た光は何か」を見分けるときにもそのまま使えます。慌てて結論を急ぐのではなく、いつ・どこで・どの方角に・どのくらいの高さと速さで・どんな形と色だったかを順に記録するだけで、後から正体を絞り込みやすくなります。
| 観測項目 | 記録の例 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 時刻・場所 | 何時何分、どの地点・方角 | 人工衛星や航空機は通過時刻で照合できます |
| 大きさ・形 | 点状/円盤状/細長いなど | 形がぶれる場合は遠くの灯火や反射のことがあります |
| 数・編隊 | 単独か複数か、隊列の有無 | 連なって動く光は人工衛星群の可能性があります |
| 方向・速度 | どの方角へ、どのくらいの速さ | 等速で直進する光は航空機や衛星が多いです |
| 高度・継続時間 | おおよその高さ、見えていた時間 | 数秒で消える光は流星のことがあります |
| 色・明るさ | 白/赤/点滅の有無 | 点滅や色の変化は航空機の灯火に多い特徴です |
| 補足情報 | 天候、レーダー描画の有無 | 雲や金星など自然現象の可能性も確認します |
この変更をどう受け止めるか
今回のFAAの改訂は、空で説明のつかない現象を観察した際に、報告を公的な窓口へ整理して集約するための手続き面の整備です。呼称の変更や報告経路の明確化は、報告へのためらい(スティグマ)を減らし、安全運航上の情報を取りこぼさないようにする狙いがあると報じられています。
一方で、制度が整ったことは、報告された現象の多くが地球外由来であることを示すものではありません。航空機やドローン、人工衛星、気象現象、機材やレーダーの誤認など、通常の説明がつく事例が大半を占めうる点は変わりません。制度の整備と、個々の現象の正体は切り離して考える必要があります。
読み解きのポイント
空で見た光の正体を知りたいときは、まず落ち着いて観測項目を記録し、人工衛星・航空機・天文現象など説明可能な候補から順に確かめていくのが近道です。プロの報告手順が示す観察の視点は、その第一歩として参考になります。
よくある質問
FAAはいつUFOをUAPに変えたのですか。+
管制官向け規程については、2025年9月12日付の通達N 7110.800で呼称を変更し、2025年10月26日に発効したとされています。航空情報マニュアル(AIM)でも2026年1月22日付の改訂で該当節が『UAP報告』に改題されました。
UAPとUFOは何が違うのですか。+
指す対象はほぼ同じで、その場で説明がつかない空などの現象です。UAP(未確認異常現象)は航空機に限らない中立的な行政・軍事用語で、UFOという語に付きまといがちな先入観を避ける狙いで採用されました。どちらも正体が地球外だと断定する言葉ではありません。
AAROとは何ですか。+
AAROは米国防総省(国防長官府)の全領域異常解決局(All-domain Anomaly Resolution Office)で、UAPの報告を集約・分析する政府の専門組織です。FAAの改訂では、報告を希望する人にAAROのウェブサイトを案内する記載が加えられたとされています。
報告ではどんな情報が必要ですか。+
FAAのマニュアルは、大きさ・形・数・進む方向・高度・速度・色・継続時間などの観測項目を示しています。レーダーに映ったか、その時の天候といった補足情報も役立ちます。一般の人が空の光を見分ける際の記録項目としても応用できます。
制度化はUFOが実在する証拠ですか。+
いいえ。今回の改訂は報告を公的に集約・検証するための手続き整備です。報告された現象の多くは航空機・ドローン・人工衛星・天文現象・誤認などで説明がつきうるため、制度の有無と個々の現象の正体は分けて考える必要があります。
